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病院と保健所をたらいまわしの日々

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日刊SPAの4月29日号に掲載されました。東京在住の知り合いの脳性まひの当事者が病院と保健所をたらいまわしになったコロナ不安の日々です。

■訪問ヘルパーの壮絶現場に密着。高熱が続く障がい

者宅で過重労働の毎日■

感染拡大する新型コロナウイルスの影響は、医療界にとどまらず福祉業界にも及んでいる。東京都内の訪問介護現場では4月中旬、38℃以上の高熱を出した障がい者がPCR検査を希望してもなかなか受診できず、病院と保健所にたらい回しにされるケースが起きていた。

↑重度障がい者の戸田さん。PCR検査で「陰性」だったが、高熱が続く

重症化しやすい「基礎疾患」があったが、PCR検査で「陰性」の診断結果が出たのは発熱から1週間後。ただ、男性は未だ熱が下がっておらず、余談を許さない状況が続いている。一方、担当したヘルパーは感染リスクの不安を抱えたまま仕事を続けている。既に2週間以上連続勤務を継続しており、関係者らは「ヘルパーが安全に介護に当たれる防護態勢と速やかなPCR検査受診につなげなければ、介護現場が崩壊しかねない事態だ」と危惧する。

■よぎる最悪の事態…「感染拡大避けたい」と16日間連続勤務■

訪問介護ヘルパーの田中誠司さん(仮名・30代)は、16日間連続で重度身体障がい者の戸田晃一さん(仮名・40代)宅を訪れている。トイレの行き来など生活に必要な介助をして、戸田さんの一人暮らしを支えている。午前9時~午後10時までの13時間勤務が連日続き、さすがに疲れの色を隠せない。ヘルパーを派遣する運営事業所は勤務実態を知っているのかと尋ねると、田中さんは「こういった状況なので、あくまで現場任せ」とあきれ交じりだ。  田中さんが2週間連続勤務を続ける理由は、戸田さんの体調が心配だからだ。  訪問介護ヘルパーとして4月10日朝に戸田さん宅を訪れた。戸田さんが息苦しさやけん怠感を訴えたので、熱を測ったところ36.8℃。微熱だったが、田中さんは「新型コロナウイルスの初期症状と類似しているので、もしかしたらと少し慌てた」と振り返る。  最寄りの保健所へ電話相談すると、医療体制が整っているA病院を受診するよう言われた。診断した医師からは「とりあえず様子を見ましょう」と言われ、風邪薬を処方されただけ。帰宅後に改めて体温を測ると、戸田さんの体温は38.3℃に上昇していた。

■コロナかも…クラスター発生防ぐため「熱下がるまで勤務する」■

↑戸田さんの家の前にある車いす

田中さんは早くから信頼できる事業所の職員と連絡を取り、今後の勤務態勢を話し合っていた。「(戸田さんの)発熱が分かった初日と2日目は僕の勤務でしたが、その後は他のヘルパーさんが担当することになっていました。仮に新型コロナウイルスにかかっていたとしたら、一番やらなければいけないのは感染拡大を食い止めること。介護現場でのクラスター発生だけは避けたかった」と最悪の事態を想定していた。 「基礎疾患」を持つ高齢者が新型コロナに罹患した場合、重症化する恐れも感じていた。田中さんは「だからこそ、早くPCR検査を受けさせてほしかった。同じくヘルパーとして勤務する方の中には、お年寄りや小さい子どもと同居している方もいる。検査が受けられない段階で戸田さんに多くのヘルパーが入るのは避けなくてはならない。僕が介助に入っている戸田さん以外の障がい者、そこで働くヘルパー、その家族、と感染拡大させてはならない」と言う。事業所の職員と相談して、戸田さんの熱が下がるまで田中さんが勤務を続けることが決まった。

↑事務所から支給された手袋や除菌シート

重症化しやすい「基礎疾患」があったが、PCR検査で「陰性」の診断結果が出たのは発熱から1週間後。ただ、男性は未だ熱が下がっておらず、余談を許さない状況が続いている。一方、担当したヘルパーは感染リスクの不安を抱えたまま仕事を続けている。既に2週間以上連続勤務を継続しており、関係者らは「ヘルパーが安全に介護に当たれる防護態勢と速やかなPCR検査受診につなげなければ、介護現場が崩壊しかねない事態だ」と危惧する。

↑戸田さんが熱を出して以降、田中さんは雨合羽を着て仕事をしている

 

■発熱から1週間後にPCR検査、結果は「陰性」それでも熱下がらず■

↑「僕が倒れたら戸田さんの介助は誰がやるのかな」と不安げな田中さん

その後も「PCR検査を早く受けたい」と保健所や医療機関に再三相談してきた。しかし、「医師の総合的な判断が必要です」「気持ちは分かるが、『陽性』者と濃厚接触した人が優先です」と思うようにいかなかった。保健所が休日の時には、新型コロナウイルス感染症専門相談窓口に朝から電話をかけ続けた。担当者になかなかつないでもらえず、電話がつながったのは10時間以上が経った夜中だった。A病院へ計3回通い、最後には医院長直々に「既に検体は取っていますので、PCR検査を受けましょう」と言われた。  戸田さんのPCR検査結果が出たのは、発熱発覚から1週間経った17日。A病院の医師から電話口で「陰性」と告げられた。感染リスクは避けられそうだと安堵したいところだが、戸田さんの熱は一向に下がらない。今もなお37.5℃以上の高熱を出す日も少なくない。  戸田さんは本当にコロナではないのか。熱が下がらない限り安心はできないと、疑いは晴れないままだ。田中さんは「自分自身も感染したくないし、感染したなら他の人にうつしたくない。仕事中はマスクや防護服を着け、手洗い消毒を徹底している。できる限りの感染防止対策をしているけど、不安はある」と本音を吐露する。

■脳性まひ男性「自宅で自主隔離難しい」■

脳性まひの戸田さんは、危険を顧みずに勤務に当たってくれている田中さんや事業所職員の対応に感謝している。一方で、保健所や医療機関の対応には現場を理解せず、マニュアル化された対応に終始しているとも感じた。「基礎疾患」を持つ戸田さんは「そもそもトイレに行くにもヘルパーの助けがいる私は、自主隔離ができない。現場の状況がうまく伝わっていないのかな」と理解に苦しむ。  戸田さんには生まれつき脳性まひがあり、最も重い障がい支援区分の「6」に当たる。意思疎通はできるが、トイレへ行くにもお風呂に入るにも介助が必要だ。両親は共に70歳以上の高齢者で、母は認知症を持つ父のサポートに追われている。2人の兄には家庭があり、負担を考えるとなかなか助けを求めることはできない。  戸田さんは「体が動かないから、コロナと分かれば速やかに入院しようと思っていた」と当初から対応を模索していた。「コロナ『陽性』者と濃厚接触した人を優先に検査を受けられると保健所から説明を受けたけど、当事者の意向を聞いて欲しいなあ」と訴える。

■介護崩壊、NPO代表「危機感が薄いのではないか」■

訪問サービスや事業所運営する「NPO法人暮らしネット・えん」の小島美里代表は今後、介護施設などが休止して訪問サービスへのニーズが高まるとみている。新型コロナウイルスが蔓延する今こそ「中途半端な形でヘルパーたちを派遣することはできません」と語気を強める。ヘルパーが複数の家で介護サービスをすることは多く、「知らぬままに感染を広げるリスクもあるし、危険をはらんで仕事をするヘルパーたちが安心して仕事ができる態勢が必要不可欠」と訴える。  同法人など訪問介護サービスを提供する4団体とヘルパー1名が10日、「訪問系サービスにおける新型コロナウイルス対策の要望書」を安倍晋三総理大臣や加藤勝信厚生労働大臣宛に提出した。要望書を出した理由について、小島さんは「医療崩壊という言葉はだいぶ前から聞かれていたが、介護崩壊も起きかねない事態となっています。なかなかイメージしづらいのか危機感が薄いのではないか」と感じている。「訪問介護のヘルパーは、自らが感染するのではないかという不安、サービス利用者に感染させるのではないかという不安、家に帰って家族に感染させるのではないかという不安。そういったことを含めて、毎日仕事に当たっているんです」と現場の状況を説明する。  戸田さん宅での仕事を終え自宅へと戻る最中、田中さんがつぶやいた。「新型コロナの疑いがあっても、介護は誰かがやらないといけないんです。たまたま僕だっただけ」。一刻も早く戸田さんの熱が下がるのを願っている。<取材・文・撮影/カイロ連>

 

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