第1回『強度行動障害を抱く知的当事者の自立生活支援』
5月30日にオンラインで行われた講座は三部制で、最初の講師は愛知県医療療育総合センター中央病院の児童精神科医であいち発達障害者支援センターの副センター長でもある吉川徹氏。
医療の専門家の立場からのお話だったが、そもそも強度行動障害は行政用語で、お金と人手を確保するために作られた概念で、それが不要ならいらない、医学的にはあまり意味のないもの、というのは恥ずかしながら初めて知った。
多くは自閉スペクトラム症(医学的にはこちらの方が重要)を伴っていて中度以上の知的障害があり、癲癇や統合失調症によって激しい行動が起こるようなケースは外して考えられている。
自閉スペクトラム症の支援がなぜ難しいのかという点においては、その症状の根っこにある情動的、反復的行動により「好きなもの」が増えにくく、「嫌いなもの」が増えやすいことや、社会的コミュニケーションの障害ゆえ「人づきあい」が動機になり難い等の点を挙げられていた。
まずは当事者の過敏な感覚の早期把握が必要であり、その特性から誤学習されてきたパターンを変えていくことが重要と説かれている。例えば当事者が受けてきた「指示」「強制」「命令」の機会を減少させ、「人で遊ぶ」という誤学習を「人と遊ぶ」ことへ変換していく等、具体的でわかりやすいかかわり方をする。
行動レパートリーのパターンを豊かにし、「できること」より「やりたいこと」を目指す。【欲望形成支援】という考え方は、これも私自身初めて触れたもので、当事者のことを理解するための「専門知」はあった方がいいという点においては得心するものがあった。
二部の講師は日本自立生活センター(JCIL)職員で、ピープルファースト京都の支援者でもある渡邉琢さんから、支援者の立場から見た関わり方についてお話を伺った。渡邉さんは「障害者の傷、介助者の痛み」など現場から見えてきた経験をもとに執筆された著作もあり、ぜひここでお勧めしておきたい。
「マンネリ、うんざり、トラウマ」~すぐそばで関わり続けることをめぐる課題~というテーマで、ある特定の他人と長期間、長時間一緒に居続ける介助現場「マンネリ」には特有の辛さや痛みがあり、相手のことがそれなりにわかってくるが故の辛さや痛みでもあるという。
そして繰り返される同じような言動に「うんざり」し、共感的態度(受容)が限界に達することで内的葛藤を我慢し続けた支援者は内なる神経症が開花すると説く。
外傷を受けてきた当事者には「トラウマ」のある脅迫的な反復があり、支援者はそのトラウマと向き合うことで外傷は伝染していくという。それが高じることで支援者間での分裂が起きる。
誰も一人では外傷と対決できない。その解決のためのきっかけとしてのオープンダイアローグ、話し合いの仕方の工夫が必要だという。それは対話を続けることを目的とし、多様な声に耳を傾け続けること。
自身を振り返ってみたときにどれだけそれができているだろうかと何度も反芻した。4時間という長丁場だったがあっという間でもあり、一方でひどく疲れもしたがとてもよいイベントだった。