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震災から今日でちょうど2年と半年が経つ。 それと、アメリカ同時多発テロが12年。 私事だが、今年の初夏にニューヨークに行った。旅の目的は違うが、行きたかった場所の一つに‘グランドゼロ’があった。 その日、朝早く起きて地下鉄を乗り継ぎグランドゼロへ向かった。ニューヨークっぽくホットドッグを片手に門の近くまで来ると、平日にも関わらず200人ほどの人がいた。チケット代というか、‘気持ち’を入口で係員に渡し、緊張しながら中に歩いていった。 細い路からいきなり前が開けると、そこにはとてもとても大きな穴(ワールドトレードセンターの跡地)が二つあった。その穴の周りは、一メートルくらいの高さの真っ黒い壁で囲まれていて、そこから10mほど下の穴に向かって四方から滝のように水が均等に流れ落ちていた。 そして、その壁には亡くなられた方の名前がフルネームで一人一人刻まれている。そんな中、‘unborn baby’と刻まれているのを発見した。そう、まだ産まれてきてない赤ちゃんの事で、でもしっかりそこに刻まれていた。そしてその横に、‘and’と書かれ、次に女性の名前があった。恐らくお母さんの名前であろう。涙が滲んだ。辛いなぁ。決して忘れてはいけない事件である。

内容は全然違えど、日本でも今から2年半前に日本人が決して風化させてはならない天災があった。 一瞬にして全てのモノを飲み込み、吐き出されたその後には、変わり果てた街と、人と、虚無感しか残されていなかった。あれから人々は互いに手を取り合いながら、先が見えない暗闇の中を手探りで一歩一歩前に進んでいった。中には前に進む事が出来ず、人生の幕を閉じた方もいっぱいいると聞く。なんとも心が引き裂かれる思いである。 そして、二年半経って未だに収束どころか問題が浮上し続けている福島原発問題では、汚染水漏えいなどの問題があり、東北の仮設住宅問題では、未だに9割の方が仮設住宅で生活していてそこから離れられない環境にいる。そして、未だに避難している人は、なんと30万人近くもいる。行方不明者に関しては2,654人。

話は少し変わって、2020年、オリンピックが東京で開催される事が正式に決まった。安倍首相を始め、多くの関係者は決まって「東京は大丈夫だから‼」と強く何度も言っている。これを聞いた被災地の方々は何と感じるだろうか。オリンピック誘致に5,000億円の予算が組み込まれ、福島の原発問題では500億円の予算しか組み込まれていないこの日本の現状に、真っ当な国民はどう感じるであろうか。 あたかも日本を訪れる外国人に目隠しをし、風評被害に苦しみ続けている福島に蓋をするようなその一方的な対応に、怒りを通り過ぎて呆れてしまうばかりである。現に菅官房長官は10日の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水漏れについて「全部、水をストップしているということではない」と述べ、周辺海域への拡散を完全には遮断できていないことを認めてきる。こんなんでオリンピックが喜べるものか!!!

よって国民一人一人(お偉いさん方は特に)が、もっともっとあの日の事を真剣に振り返り、考え、行動に移していく必要があるのでは。行動出来ずとも、政府のやり方がおかしいと感じる事はできるはずだ。みんなが一つにならないと。今の苦しくて辛い現状をしっかり見つめなきゃ。楽しい事だけ一つになるのは、簡単だ。まずは、震災の話をしよう。隣の人、恋人、家族、友達。そこから変わっていくはずだ。

 

最後に、 震災で亡くなられた1万5千人あまりの方々のご冥福を心からお祈りすると共に、未だ見つかってない行方不明者2千人以上の方々の何かしらの手がかり、または遺留品の一部でもいいので、家族の元に帰れたらと願わずにはいられない。 そして、どうかこの日本がこれ以上おかしくならないよう、切に願う。